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レスター・ワンダーマン氏

【第1回】MAに活用すべき「カリキュラムマーケティング」とは?

【ダイレクトマーケティングメソッド】ワンダーマンの売る広告

パーソナライゼーション実現のヒントを得られる「カリキュラムマーケティング」とは?

ダイレクトマーケティングの発明者、レスター・ワンダーマン氏のノウハウ公開。

 


MA(Marketing Automation)の活用において、最も難度が高いのは、
「コミュニケーションシナリオの設計」
です。

「コミュニケーションシナリオ」とは、簡単に言うと、コミュニケーションターゲットであるユーザー(サイト訪問者、見込客、既存客など)に対して、どのような「メッセージ」をどのような「メディア・ツール」を通じ、どんな「タイミング」で届けるかという一連の「コミュニケーションの流れ」を組み立てたもの。
MA活用を前提とする「コミュニケーションシナリオ」の設計においては、できる限りターゲットユーザー一人ひとりの状況やニーズに応じて個別化されたメッセージを提示することが求められます。
すなわち「パーソナライゼーション」です。一人ひとりに対する、きめ細かいコミュニケーションを行うことで、ターゲットユーザーからのレスポンス(URLクリック、資料ダウンロード、試供品請求、商品購入など)を向上することが可能になるからですね。ただし、きめ細かいコミュニケーションの組み立てには、高い知識・スキルと経験が必要であり、それだけ難度が高いというわけです。

 

MAのコミュニケーションシナリオの設計ノウハウは「ダイレクトマーケティング」にある


さて、MAというマーケティングテクノロジーを活用するからこそ実現可能なシナリオもありますが、基本的にコミュニケーションシナリオの設計ノウハウは、1950年代にレスター・ワンダーマン氏が‘発明’し、発展してきた「ダイレクトマーケティング」の中に詰まっています。
そこで、ダイレクトマーケティングの父と呼ばれる、レスター・ワンダーマン氏の著書『ワンダーマンの売る広告』から、1980年代に開発された「カリキュラムマーケティング」の具体事例のエッセンスをご紹介します。

「カリキュラムマーケティング」が開発された当時は、当然ながらインターネット以前。「郵便ダイレクトメール」が主たるコミュニケーションツールとして用いられました。しかし、カリキュラムマーケティング施策として設計されたコミュニケーションシナリオは、限りなくパーソナライズされたきめ細かいものでした。
郵便を用いたわけですから、印刷費用や郵送費用を始め運営費用に膨大なコストが必要でしたが、現代であればMAを活用することで、eメール主体のコミュニケーションシナリオの自動化による大幅なコストダウンが可能となっています。

 

リンカーンで展開された「カリキュラムマーケティング」の実際


では、カリキュラムマーケティングが初めて実践された1980年代の米国での事例をご紹介します。
対象製品は、フォードの高級車「リンカーン」。
当時のフォードの新型リンカーンは、ゼネラルモーターズの「キャデラック」より、デザインも構造も優れていました。しかし、消費者おの認識は異なり、「キャデラック」のほうが優れているというイメージが根強かったのです。
当時、「ブラインドテスト」、すなわち、リンカーンかキャデラックのどちらに乗っているかわからないようにして試乗してもらうと、必ず、リンカーンのほうが乗り心地が良いと答えるものの、「どちらの車に乗っていると思うか?」と聞かれると、多くの消費者が「キャデラック」と答える状況でした。

このような消費者のブランドイメージを壊し、リンカーンの売り上げを伸ばすために、ワンダーマン氏が考えたのが、消費者にリンカーンの良さを理解してもらうための「教育プログラム」を開発し、ダイレクトメールを通じて消費者を教育する方法、すなわち「カリキュラムマーケティング」でした。

一般に、「カリキュラム」とは、教育者が、一回の授業ごとに一つの学習ポイントを順に教えて、最後にテーマ全体を理解させるように計画されているものです。学習者が多くの内容をいっぺんに理解することは困難ですから、1回の学習で消化可能なところまで分解した内容を順番に教えていく。この「カリキュラム」をダイレクトマーケティングに応用したのが「カリキュラムマーケティング」です。
リンカーンにおけるカリキュラム作成は、まず会議室の壁を人々が新車を買うときの質問で埋めつくすことから始まりました。その質問に答える内容が、リンカーンの良さを理解してもらうための「カリキュラム」となります。
このカリキュラムに沿ったダイレクトメールを受け取ることは、消費者にとっていわば「リンカーン大学」への入学であり、卒業とは新型リンカーンを購入し、キーを手にすること。そして、リンカーンのオーナーは「同窓生」になるというわけです。

 

カリキュラムマーケティングの施策概要


実行されたリンカーンのカリキュラムマーケティングの施策概要は以下の通り。

1 ターゲットリスト(見込客リスト)にアンケートを添えて入学通知」を送付。
・アンケートでは以下の項目を確認。

a) 車の購入や整備についてもっとも興味のある分野
b) 新車を購入する予定時期

2 アンケート回答結果を分析
・車をすぐ買い換える人、買い換えるまでに時間がかかる人に分け、さらにそれぞれの興味分野との相互関係を新貝にする

3 アンケート分析結果に基づき、個別につくった「カリキュラム」を3回の「レッスン」に分けてDMとして発送
・毎回、見込み客が各DMにレスポンスする機会を提供し、対話を継続した。
・各メールで理解促進のための強化策や行動させるインセンティブを提供。強化策やインセンティブは、DMを受け取る回数が増えることで蓄積させる仕組みとした。
・最終的な販売につながるよう、劇的な「卒業イベント」を行った。

 

大成功をおさめた「カリキュラムマーケティング」


このカリキュラムマーケティング策は、リンカーンの売り上げ拡大に大いに貢献しました。
最初のアンケートを受け取った人のうち、回答して返送した人はほぼ3割。このアンケート回答者50万人をアンケート分析結果に基づき複数のセル(セグメント)に分け、それぞれに個別のダイレクトメールプログラム(カリキュラム)を3回に分けて走らせたのです。
その結果、3回シリーズのDMを受け取った人がリンカーンを購入した割合は、DMを一切受け取らなかった消費者と比較して約2倍に上りました。

通常のダイレクトメールはワンショット、つまり1回限りのコミュニケーション。しかし、アンケートメール含めて合計4通のDMが、内容の連続性を持って同じターゲットユーザーに送られる「カリキュラムマーケティング」では、たくさんのメールを受け取った人ほどリンカーンの購入率が高かったのです。これは、段階的な教育プログラムの効果の高さを示していると言えるでしょう。
郵便ダイレクトマーケティング時代の「カリキュラムマーケティングは、ターゲットユーザーからのレスポンスを受け取るたび、データを入力し分析して、セグメントを作成、それぞれに送るべきメールの内容を出し分けるというプロセスをほぼ手作業で行われていました。しかし、カリキュラムマーケティングのシナリオを「MA」に乗せることができれば、カリキュラムマーケティングはほぼ自動化できることがおわかりでしょう。

今回はここまで!

第二回では、カリキュラムマーケティングの別の事例をご紹介したいと思います。


      |     |第2回へ>


執筆者:松尾順松尾順

株式会社ジェネシスコミュニケーション マーケティングインテリジェンス事業本部

執行役員/マーケティングコンサルタント

 

 






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