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『アイ・エム・プレス』西村道子編集長インタビュー【第3回】 データドリブンマーケティングが内包する3つの課題とその解決策

1995年に『アイ・エム・プレス』を創刊し、現在までマーケティング、とりわけダイレクト・マーケティングをはじめとするインタラクティブ・マーケティングの最新トレンドをウォッチしてきた株式会社アイ・エム・プレス代表取締役社長の西村道子氏。

2014年の『アイ・エム・プレス』の終刊後は、「インタラクティブ・マーケティングまとめサイト」を開設。同サイトに『アイ・エム・プレス』に掲載されたケーススタディ(企業事例)を順次、無料公開するとともに、ブログ「西村道子コラム」を通じた情報発信を続けている同氏に、ダイレクト・マーケティングの変遷や課題、そして今後の展望などについてお伺いした。

I.M.press 西村道子氏

株式会社アイ・エム・プレス代表取締役社長/「インタラクティブ・マーケティングまとめサイト」編集長
西村道子様


【第3回】ダイレクト・マーケティングにおいても、企業の「社会的価値」や「従業員満足」を重視したアプローチが必要!

■ダイレクト・マーケティング展開における3つの課題

■企業の生み出す「社会的価値」が今後ますます重要になる

■企業、従業員、マーケティング、そのすべての方向性が揃わないと持続・成長的なマーケティングは実現しない


 ダイレクト・マーケティング展開における3つの課題


― では、今後のダイレクト・マーケティングの展開における課題はなんだとお考えでしょうか?

西村氏:ダイレクト・マーケティング、特に最近主流のデータドリブンマーケティングには3つの本質的な課題があると考えています。

1つ目は、個人情報をいかに適切に管理して流出させないようにするかということ。この点については、これまでに何度となく取りざたされてきましたが、いまだに個人情報の流出をめぐるニュースが新聞紙上を賑わしているのはご存じの通りです。

データの管理と、適切な活用が重要

データの管理と、適切な活用が重要

そして、2つ目は個人にかかわるデータを適切に活用するということです。これまで、個人にかかわるデータを必ずしも適切に管理・活用してこなかったがために、ダイレクトマーケターは自分たちが手に入れた便利なメディアを、自分たちの手で首を締めて殺してきたようなところがあります。

これは歴史的に繰り返されてきたことです。例えば2000年代半ばぐらいから盛んに利用されてきたeメールも、最近は誰も開かなくなってきている。無差別かつ多量に配信される「スパムメール」は論外ですが、送り手はスパムとは認識していなくても、受け手はスパムだと認識しているeメールも実は大量にあって、それでeメールの開封率が低下してしまっているのではないでしょうか。

さらに最近ではリターゲティング広告にも類似の問題がありますね。例えば、先日私が斎場へのアクセス方法をネット検索した後、その斎場のリターゲティング広告が繰り返し表示されるようになり不快な気分にさせられました。斎場を調べたのはとある葬儀に参列するためにすぎないし、そもそも来る日も来る日も斎場を探しているような人は、関連業界以外には存在しないのではないかと思うのですが。

古くは、訪問販売会社による”押し売り”が問題になった時代もありましたし、その後も無差別のセールス電話、そしてスパム的なeメール、リターゲティング広告まで、「プライバシーの侵害」と思われるような、不適切なデータ活用を続けた結果、本来、効果的なメディアや手法を、マーケターが自ら封殺していっている側面があると思っています。

3つ目の課題は、「そもそも過去のデータを分析しているだけで未来が創造できるのか?」ということです。

まず、ダイレクト・マーケティングでは、レスポンスのないお客様のことは把握することができません。もしかしたら、自社のオファーにものすごく腹を立てているお客さまがいらっしゃるかもしれないわけですが、その点については手元にデータがないので分析のしようがありません。

また、既存のお客さまのデータベースがあったとして、限られたターゲットリストに対して、手を変え品を変え「売らんかな」のプロモーションを繰り返していくと、それは過度に狩猟型の、刈り取るだけ刈り取るようなマーケティングにもなりかねません。

こうして、既存顧客の過去の購買履歴ばかりを追いかけていると、一方では既存客の自然減や一定数の離反がある中で、マーケットの「縮小再生産」に陥ってしまうのではないでしょうか。


― おっしゃる通りですね。POSデータで売れ筋データをいくら分析しても、次に何が売れるかは読めないものですしね。


 企業の生み出す「社会的価値」が今後ますます重要になる


― 西村さんが挙げられた、これら3つの課題を解決する方法ってあるんでしょうか?

「誰から買うか」がますます重要になる

「誰から買うか」がますます重要になる

西村氏:これらの課題を解決するためのアプローチの1つとしては、「CSV:Creating Shared Value」、すなわち、企業がいかに社会的な問題を解決していくか、社会的な価値を生み出していくかという考え方があります。

メンバーズが実施した「CSV SURVEY」(2016年1月)では、生活者の73%が商品やサービスの購入時に「企業の考え方」を重視していて、しかも前年から16ポイントも増えています。つまりそれは、単に「品質が高く、値段が安く、そして手軽に購入できれば良い」というだけではないお客さまが増えてきているということです。すなわち、その会社はどれだけ社会に価値をもたらしているのだろうか?というような「企業の人格」を見る時代になってきていることがわかります。


― 商品の差別化がますます難しくなってきて、機能や価格もそれほど変わらないとなると、あとは企業で選ぶしかないという話しでしょうか。「何を買うか」よりも「誰から買うか」という点がますます重要になってきたということでもありますね。


 企業、従業員、マーケティング、そのすべての方向性が揃わないと持続・成長的なマーケティングは実現しない

 

西村氏:もう1つのアプローチとして「ES(Employee Satisfaction)」、すなわち「従業員満足」があります。ESといってもいろいろなアプローチがありますが、最近では従業員のモチベーションをいかに向上するかに注目が集まっていますね。私が注目しているチップ・コンリーが提唱する「PEAK経営」の考え方では、さまざまなステークホルダーの状態をピラミッド状に表してモデル化したものを作成しています。

そのうち、Employee(従業員)のピラミッドを見てみると、最下層は最低限のお金を支払えば生きていくことができるので、基本的な動機付け(モチベーション)になる。真ん中の層は、成功をちゃんと認めてあげることによって企業に対する忠誠心(ロイヤリティ)を築くことができる、ということが表されています。

そして、最上位層は、自分が働く意味を見出すことによってインスピレーションを生み出すとされています。少し前にイマジネーションという言葉を使いましたが、この最上位のポジションに到達することで初めて、「言われたから実行する」という受け身なポジションから脱して、自分のイマジネーションやインスピレーションに基づいて主体的に行動するというところに達するのではないかと思います。

「CSVやESを踏まえ、「顧客への洞察に基づく売れる仕組みづくり」を

CSVやESを踏まえ、「顧客への洞察に基づく売れる仕組みづくり」を

これは、先ほどのCSVとは別の話というわけではなく、CSVの延長線上で捉えていくべきだと思うんです。どういうことかというと、「ウチの会社はこういうことで社会に貢献します」という基本的な考え方があって、従業員であるあなたはこの軸で評価しますよということを明示しておけば、どういう行動が評価されるのかが明確になり、企業として一貫性のあるコミュニケーションの実現に一歩、接近することができるからです。

CSVやESは、そもそも企業経営における考え方ですが、それをマーケティング、とりわけダイレクト・マーケティングなどのデータドリブンマーケティングにも適用していかないと、先ほど申し上げたように、eメールを殺し、またリターゲティング広告も殺し、いったい、マーケターは便利なメディアを何度殺してしまうんだ?ということになりますし、あるいは、近視眼的に既存のお客さまから刈り取るだけ刈り取ったら、今度は新しいお客さまを探そう、というようなことにもなってしまいます。

ですから、企業としては、CSVやESをきちんと踏まえた上で、「顧客への洞察に基づく売れる仕組みづくり」を推進していくことが大切なのです。


― なるほど!!ダイレクト・マーケティングにおいても、CSVやESが重要だというのは目から鱗のご指摘でした。本日は、お忙しいところ貴重なお話しありがとうございました。


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